第63章 妻に望むもの〜信長様誕生日sp〜
「ぷっ、ふふっ、あははっ!」
「貴様、何がおかしい」
少しバツが悪そうに信長様は私を睨む
「だって、そんな真剣に悩むなんて、ふふっ」
とても、第六天魔王なんて言われてた人とは思えない。
「聞こえると言っても、声の響きを感じ取るとかみたいですよ。私の声が嬉しいと嬉しい響きで伝わるみたいです」
「なる程、ならば問題ない。貴様を気持ちよくするだけだからな。さぞやいい響きとなって伝わるであろう」
困っていた顔は途端に嬉しそうに口の端を上げ、
ちゅっと、私の首筋に口づけを落として、イタズラに太腿をさすってきた。
「ん........」
僅かに触れられるだけでも体が疼いて肩を窄めてしまう。
私達は、それくらい触れ合っていない。
一緒にいる時は、ほぼ毎晩の様に肌を重ねてきたから、信長様に抱かれない夜に体が疼くという事を、私は今回の戦で初めて知った。
「っ、あ、あのっ、これからどこへ行くんですか?」
馬上で道中とは言え、あまり触られると私も激しく抱きついてしまいそうで、慌てて話を逸らした。
「もう間も無く着く」
「えっ?そうなんですか?」
だって、まだお城を出てそんなに経っていないのに..........
「長時間の移動は貴様の体に負担となるからな」
私のお腹に手を当てながら信長様は優しく言ってくれるけど、本当にお城を出て湖岸の道を少し進んだだけで、私の思っている旅行とは違ってそうだ。
「?????旅ではなくて、散策ですか?」
ニ日分の荷物をまとめたけど、このまま日帰りできそうだけど...........
「先程も言ったが、人の言う事は最後まで聞くものだ」
戸惑う私に、信長様は笑いながら私の耳元で囁く。
私は全くもって???なまま、時折戯れに与えられる熱に耐えながら、目的地の宿?へと着いた。
「..........ここ....ですか?」
湖沿いに建てられたその建物は、宿とも、茶屋とも、何も看板の様なものはなく、閑静な佇まいといった感じで........
「隠れ家的な......宿....ですか?」
不思議がる私より先に馬から降りた信長様は、笑いを堪えながら、私を抱きしめる様に馬から降ろしてくれた。