第62章 旅立ちの日〜最終章〜
「やけに寛大だな。他の女を抱いても良いと?」
背中に巻き付いた私の腕を離し、信長様は私の顔を覗き込んで、おでこを合わせて来た。
「っ、はぁ、はぁ、いじわる...........はぁ、分かってるくせに、そんな事したら、ここを出て、お腹の子と二人、山奥でひっそりと暮らします」
口を塞いでくれて良かった。他の女の人となんて、やっぱり耐えられない。
「ふんっ、無理をせず最初からそう言えばいいものを、それに勝手に出ていく事は許さん。だが貴様が山奥で暮らしたいなら俺もそうしよう。貴様と産まれてくる子と山菜を取って暮らすのも悪くない」
「うそっ、信長様が山菜を取る姿なんて想像出来ません」
山菜にもおれ様な態度をしそうだ。
「まだ取ったことはないが、貴様とおると、初めての事ばかりだからな、退屈はせんだろう」
私の頬に手を添えて優しく笑う信長様。
こー言う時の私が素直じゃないのを知ってて、本当にずるい。
「っ、山奥には、信長様の大好きな金平糖も、
綺麗な女の人もいませんよ?」
「貴様がいて、笑っておるならそれでいい」
「.......んっ」
今度は優しく、私の口と遊ぶ様な口づけを繰り返す信長様。
唇から伝わる温度が温かくて幸せで嬉しくて、こんなにもあなたを愛してると痛感する。
「ふっ、手を止めてしまったな。俺が遅れるわけにはいかん。続けよ」
これから戦へ行くと言うのに、信長様は悪戯っ子のように笑った。
「っ、ごめんなさい」
私も我に帰り、甲冑を着ける手を動かした。