第62章 旅立ちの日〜最終章〜
時間は、どんどん流れて行く。
朝餉を済まし、甲冑を着る前に、信長様は湯浴みをして身を清めた。
湯浴みを終えた信長様のお身体を手拭いで拭いていく。
その逞しい体にドキドキするけれど、無事で戻られることを何度も心の中で唱えながら、濡れた体を拭いた。
そして広間へと戻り、甲冑を装着していく。
「.........くれぐれも、無茶はしないで下さいね」
「分かっておる」
「ご飯も、しっかり食べて下さいね」
「大丈夫だ」
「睡眠も、信長様はあまり眠られないから、それでもちゃんと寝て下さいね」
「毎晩、貴様のいる方に向かっておやすみを言うのであったな」
「おはようも、忘れないで下さいね」
「覚えておる」
「あとは、..............」
浮気しないでって言いたかったけど.......
「どうした、浮気をするなとは言わんのか?」
私の心の中までお見通しなのか、悪戯な顔で私を覗き込む信長様。
「..............っ、だって、簡単に他の女の人にって思うなってこの間...........それに....」
涙が出そうで、それを誤魔化すために信長に抱きつくと、頭を押さえられ、噛み付く様な口づけをされた。
「っ、...........本当は、..........ん、無事に戻ってきてくれるなら、それだけで良いんです。他には何も、はっんん............」
何も望まない。信長様がいてくれればそれでいい。
と言いたかったけど、口を塞がれ苦しくて言えなかった。
「んっ、のぶ..............っ、まっ、くるし...........」
絡みつく舌がどんどん呼吸を奪っていって苦しいのに、強く抱く腕が、更に呼吸を苦しいものにして行く。
「っ、..............」
信長様の背中に回した手に力が入らなくなって来た所で、銀糸を引きながら信長様は唇を離し、ペロリと舌でそれを舐め取った。