第62章 旅立ちの日〜最終章〜
「っ、そんな事言うのずるい。私の方が、ずっと前から信長様しか見てません」
こんなにも、苦しくなる程にあなたが好きで、よそ見なんて出来るわけがない。
「信長様しか見えないのに」
「当たり前だ。そうなる様に時間をかけて貴様を愛してきた。」
この目と言葉が、私を常に捕らえて離さない。
「貴様の全ては俺のものだ。この唇は俺が口付ける為だけに存在する」
「ん....................」
この口は、お話もするし、ご飯も食べるし、決して信長様とのキスのためだけに存在してないけど、今この瞬間は、与えられる熱をただ感じていたい。
あんなに秀吉さんに場所を弁えろと言われたのに、私達は神社の境内で何度も唇を重ね、離しては見つめ合い、そして口づけ合った。
その後、安産祈願はしてやると言って、信長様と二人で祠に手を合わせた。
私はもちろん、信長様の無事の帰還もたくさんお願いをした。
怪我をしませんように
病気になりませんように
元気に、戻って来てくれますように
早く、安土に戻れますように
願わくば、戦のない世の中が少しでも早く来ますように。
500年後の未来から来た私は、この後の何となくの歴史の流れを知っている。
でも、私や佐助くんがこの時代に来た事で歴史は少しづつ変わって来てる。
歴史は苦手だったけど、よく、本能寺で織田信長がもし命を落としていなかったら日本は違っていたのでは説を聞いた事がある。
その説の通り、信長様は本能寺で殺される事なく生きている。
何より、信長様と結婚するのは私ではなかったはずなのだから.......
だから、信長様の作ろうとしている争いの無い国はきっと、近い未来に実現すると思っている。
その未来が、少しでも早く来ますように。
そしてどうか、信長様が、幸せでありますように。