第62章 旅立ちの日〜最終章〜
「っは、....................んんっ.....」
優しく唇を喰みながら口内に優しく侵入し、私の舌を絡め、呼吸を奪っていく信長様の口づけ。
初めての頃は、征服される様な一方的な口づけだったのに、いつからか、優しく蕩けるような口づけへと変わった。
私が、この口づけ以外を知る日はもう来ない。
私の唇や身体は信長様仕様にされていて、いつも信長様を待ちわびている。
「どうした、まだ欲しそうな顔をして」
銀糸を伸ばしながら唇は離れる。
「...............っ、」
私に、もっと欲しいと言えと、首筋にあてた指を動かしながら、その顔は悪戯に笑う。
でも、まだ理性が残っていて言葉を発するのを邪魔した。
「ふっ、強情な奴だ....」
笑いながら再び近づく顔に見惚れながらも目を閉じて、重なる唇を受け止めた。
「んっ..........」
明日からは、当たり前じゃなくなるこの日常。
やっぱり寂しい。
手を伸ばして、信長様の首に巻き付けようとした時、
「あー、コホンっ!」
これもまた、お決まりの合図が耳に聞こえてきた。
「ふっ、うるさい奴が来たようだな」
笑いながら信長様は唇を離す。
「いつも注意しておりますが、場所を弁えて下さい」
「ふんっ、恋仲の女を横にしても貴様のその堅さは変わらんな、成長せん奴だ」
私達に注意する秀吉さんの横には葵が!
私たちのこんな行為を見慣れている秀吉さんと違って、葵は頬を僅かに赤らめ気まずそうに顔を伏せている。
ひゃ〜!!
信長様にの口づけに酔ってぽーっとしてたけど、一気に醒めた!
流石に、友達に口づけしている所を見られるのは初めてで、やはり場所は弁えるべきかもと反省。
それに、葵を見て、神社と赤ちゃんの事を思い出した。
そうだ、私信長様に伝えたい事があったのに、またしても与えられる熱に酔いしれてしまって.......
「では、俺たちは失礼します。くれぐれも城内外での軽々しい行いは謹んで下さい、アヤ、頼んだぞ」
念を押され、秀吉さん達は去って行った。
「.........あの、信長様」
「何だ」
「少し、お時間を頂けませんか?」