第61章 欲しいもの
京から無理矢理連れ帰り、堪えきれず貴様を初めて抱いた夜、泣き喚き、怯えながらも時折甘い声が混じり、その声にどうしようもなく唆られ征服欲に駆られた。
欲をアヤの中に吐き出しても熱は治らない。
『お願い、もう、やめて』
悲痛な声ですら俺を更に興奮させる。
『まだだ、もっと貴様を見せろアヤ』
もう一度、もう一度と、何度も体が反応して、夢中で抱き続けた。
.............情事の後、着物の着方も知らないアヤは、魂の抜けた様な顔で着物を羽織り、帯を手にふらふらと部屋から出て行った。
その後も、毎晩俺はアヤを呼び出しこの腕に抱き、アヤからは次第に生気が消えて行った。
食事も満足に取らず、抱く度に細くなっていくアヤに俺は内心焦った。けれど抱きたい衝動は治る所かどんどん増えていく。
だが、どうすればいいのか分からない。
数多の女を抱いてきたが、皆喜んでその身を捧げてきたし、悦ばせてきた。
アヤの様に頑なに心を閉ざし、泣き喚く女などいなかった。
だがそれも一興、嫌だと言いながらも快楽に身を捩り声を漏らすアヤを見る事で満足だと自分に言い聞かせ、俺は心の焦りに蓋をした。
そして暫く経った頃、秀吉からアヤに針子の仕事をさせている事を聞いた俺は、アヤの部屋へと足を向けた。
着物を自分で着ることも出来なかった女が着物を縫う事など出来るのかと、興味を引かれたからだ。
襖をそっと開け中を見ると、俺の知らないアヤの顔。真剣な顔をしたかと思うと、縫い終わり満足げな笑みを浮かべている。
そんな無防備な笑顔に見惚れると同時に苛立ちを覚えた。