第61章 欲しいもの
軍議がひと段落し天主へ戻る途中、中庭でシンを遊ばせているアヤの姿が見えた。
「アヤ!」
名前を呼ぶとこちらを振り返り、シンと共に走ってくる。
「信長様」
満面の笑みのアヤと、嬉しそうにしっぽを振るシン。
「ふっ、どっちが犬か分からんな」
俺の妻となり、この城の奥となっても、変わらず愛らしく子供の様な素振りを見せる。
「もう〜、またそんないじわるな事」
目の前で、口を尖らせ拗ねるアヤ。
「ふっ、........」
アヤの柔らかな髪に手を入れ髪を梳きながら抱き寄せる。
「信長様?」
少し顔を赤らめ不思議そうに頭を傾げるアヤ。
こんな愛らしい仕草も、先程の様な笑顔も、俺に見せる様になるまでには時間がかかった.............