第60章 花屋夫人
(嬉しい嬉しい。明日は何着て行こう。どこに行こうかな。)
もう、楽しみで仕方がない。
(..........でも、.........あれ、待てよ?
...............,何か私.....? 忘れてない?
..................................ハッ、しまった!!)
ここで私は漸く、またしても信長様に上手く乗せられてしまったことに気づいた。
何て事!!!
もう、御母上様の話が出来る雰囲気ではなくなってしまった。
昨夜といい、今といい、一枚も二枚も上手の信長様。私の事なんて、全てお見通しなんだ。
「どうした、手が止まっておる」
「あ、..........いえ、」
楽し気な笑顔を向けてくる信長様に何も言えず、この夜もまた、甘くて蕩けそうな程の愛を刻まれた。
・・・・・・・・
そうして迎えた次の日の朝、何とかして信長様と御母上様を会わせたくて、私は焦っていた。
でも、信長様とずっと一緒で一人になれる時がなく、時間だけが過ぎて、とうとう城下へ出かける時間となってしまった。
「アヤ行くぞ」
「はっ、はいっ」
とは言え、デートはやっぱり嬉しい。
もうすぐ戦に行ってしまう信長様に、少しでも可愛いと思ってもらいたくて、目一杯気合を入れた。
「お待たせしました」
変かな、変じゃないよね?
ドキドキしながら差し出された信長様の手を取ると、そのまま引き寄せられた。
「......わっ!」
ボスっと、信長様の胸に倒れ込むと、そのまま抱き締められた。
「貴様、どういうつもりだ」
「え?どこか変ですか?」
「そんなに綺麗な貴様を見たら、出掛けずに押し倒したくなる」
朝には似つかわしくない艶を帯びた顔で、囁かれた。
「っ、.......それは....困ります」
本当に困る。今日は、どうしてもお出掛けしてもらわないと私の計画が.......