第60章 花屋夫人
「だから、お前に頼むんだ。もし、御前様が自分勝手な理由で信長様との中を修復したいとお考えで、信長様を再び傷つけてしまった時は、お前がその悲しみを拭ってやってほしい。アヤお前なら、それが出来る」
「.....................っ」
...........結局、押し切られてしまったけど、どうしよう。
どう切り出そうか迷ってるうちに、どんどん時間だけが過ぎてしまい、夜になり、天主へと私は戻ってきた。
信長様はまだ戻られていない。
本当に、どうしよう。
私の知っている親子像では計り知れないほどであろう事に、どう切り出せばいいのか。
しかも、昨日今日の出来事ではなく、傷も深い。
もともと、信長様には深い闇があると感じる事がある。
出会った頃よりそれを感じなくなったけど、
たまに、全ての感情をぶつけるように激しく抱かれる事があって、それはきっと過去のトラウマが無意識のうちに引き起こしているのだろうと思っていた。
私はどんな信長様も愛しているし、そんな感情を私にだけぶつけてくれているのだとしたら、喜んで全てを受け止め癒してあげたい。
秀吉さんの言う通り、悲しみを私で拭えるのなら、どんな事をしてでも拭ってあげたい。
「アヤ、戻った」
考えがまとまる前に、信長様が戻って来られた。
「信長様、お疲れ様です。お帰りなさい」
慌てて立ち上がって、信長様の元へ。
私から抱き着こうとした所を反対に抱き締められた。
「わっ、信長様?.........っ」
覗き込まれたと思ったら、唇が勢いよく重なり
「ん、....まっ..........」
頭の後ろに入れられた手でそれは完全に封じ込められる形となり、呼吸を奪われて行く。
「ん..........、のぶ...........っん」
シュルシュルと、もう片方の手で帯を解く音が聞こえると、そのまま着物は肩から滑り落ちて行く。
一枚......また一枚と.......
あっという間に裸だけど、それ以上に口づけが性急すぎてついていけない。
強引に絡め取られた舌と息苦しさが相まって。飲み込めない唾液が喉を伝った。
「っ.........くるし.............」
足にももう、力が入らない。