第59章 奥の務め
信長様の腕の中でおにぎりを食べながら、天主へと運んでもらう。
とても贅沢な事だけど、すっーーーーーっごく照れる。
でも、羽織を受け取ってくれて、その場で着てくれるなんて思わなかったから、凄く嬉しい。
自分で言うのも何だけど、凄く似合っていて、顔の良い人は何を着ても本当に似合うんだなぁと、でも、カッコいいなんて本人に言ってしまったら、当たり前だとか言って、また自分はモテる自慢をされそうだから、言わずにおこうと思った。
とは言え........
顔で好きになったわけではないけれど、信長様の顔は本当に綺麗。
うっとりと魅入っていると、
「早く食え!もうすぐ着くぞ」
さっさと食べろと促された。
「はいっ!」
必死でまたおにぎりを噛んでは飲み込む。
ちゃんと消化できているんだろうか。
抱かれている最中に、消化しようとするお腹がグルグルと鳴ったら嫌だなぁと思いながらも、必死で食べた。
部屋に入ると当たり前のように褥へと降ろされ、性急に唇を奪われた。
角度を変えながら、呼吸すらも吸い取られそうな口づけに、クラクラする。
着物なんて、気がつけば暴かれていて、信長様も今日は早々と自身の着物を脱ぎ払い、まるで湯殿での営みを思わせるように、素肌と素肌がぴったりと重なり合っていた。
ずっと、触れ合いたかったから、このまま身を委ねようと思った時、ふと思い出した。
「あれ?そう言えば、何か話があるって、言ってませんでした?」
そうだ。さっき針子部屋で、話があるから天主に行くって言っていた気が.....
信長様の胸を少し押すように聞くと、その押した手を掴んで見つめられた。
「?........信長様?」
少しの間を置いて、信長様はふっと笑うと、優しく触れるだけの口づけをくれた。
「今夜は、貴様を寝かせるつもりはないが良いかと、聞きたかっただけだ」
「.......っ、わざわざ針子部屋にそれを聞きに来たんですか?」
「夫婦の営みは、最重要事項だ。」
夫婦の営みって.........またそんな照れる言葉を簡単に.....
それに、その問いかけに、ダメだと言う選択肢はあるんだろうか?
「だ、ダメだと言ったら?」
試しに聞いてみた。