第59章 奥の務め
「ふんっ、余計に朝まで寝かせたくなくなるだけだ」
ぷにっと、私の下唇をイタズラな顔で押した。
やっぱり......
「うー、聞く意味ないじゃないですか」
「当たり前だ。貴様は俺の妻で俺のものだ。俺に抱かれる以外の選択肢などない」
ぷにぷにと押された唇は、今度は優しく歯を立てて食まれた。
「っ、どうして今日はそんなに噛んで来るんですか?痛いです」
舌も、鼻も、唇も、噛まれた。
「貴様は、舐めるだけでは味わいきれん。しかと噛んで、食べ尽くさねばな」
そう言う信長様の目は、熱を孕んでいる。
「っ、痛いのは......嫌です」
うそ。本当はドキドキしてる。
痛みさえも甘さに変えてくれるその目に、その手に、その声に、その全てに。
「ふっ、もう痛みは与えぬ。時間の流れなど忘れるほどに今夜は愛してやる」
形の良い唇が綺麗に弧を描きながら近づくと、甘く優しい口づけが始まった。
本当は、信長様が針子部屋へ来た理由は、戦に行くのを諦めさせようとしたのではないかな。
だけど、私の方が先にいかない事を伝えたから....
否定も肯定もしない。私の意見を最後まで聞いてくれ、それを受け止めてくれた信長様に胸が熱くなった。
「っん、..............ん」
お礼を改めて言いたかったけど、唇は既に奪われていて、私の思考もだんだんと蕩け始めたため、それは明日へと持ち越された。
限界を知らない信長様に、その夜は骨の髄まで味わい尽くされ、宣言通り、時間を忘れるほど(意識を失うほど)に愛された。