第59章 奥の務め
「.........ありがとう。やっぱり葵はすごいね」
「ふふっ、だから、全部秀吉様の受け売りだって言ったでしょ?」
こんな時だって、大好きな人を立てる事ができる葵はさすが秀吉さんの選んだ女性だ。
もやもやが一気に晴れて、自分のやる事が分かった。
「ありがとう。私、自分のやるべき事が分かったから行くね」
「うん、頑張れ、応援してる」
パチンっと、お互いの手を叩きあって気合を入れた。
私は一人じゃない。
困った時に助けてくれる仲間とお城のみんながいる。
心は軽くなった。
後は、弱い自分に向き合わなければ。
誰もいなくなった針子部屋に入って、棚から製作中の着物を丁寧に取り出した。
針子仲間にも、誰にも内緒で時間を見つけては少しずつ作ってきた物。
「よし、絶対今日中に仕上げる」
自分に気合を入れると、針に糸を通して縫い始めた。
一針一針に、沢山の想いを込めて、願いを込めて........