第59章 奥の務め
「秀吉さんお疲れ様です。差し入れをお持ちしましたので召し上がって下さい」
「アヤ、悪いな」
「差し入れのお団子は私が配るから、葵は秀吉さんと話してて。」
少しでも長く一緒にいさせてあげたい。
「ありがとう。でも、一緒に配ってから少しお時間貰える事になったから大丈夫」
会ってたった数分なのに、もうそんな約束をした二人。やっぱりお似合いで嬉しくなってしまう。
信長様が忙しいなら、側近である秀吉さんももちろん忙しい。僅かな時間でも一緒にいたいのは誰だって同じ。
休憩をする兵の方々に差し入れのお団子を配り終えると、「ちょっと行ってくるね」と言って、葵は足早に秀吉さんの所へと行き、二人で木陰の方へ歩いて行った。
「ふふっ、葵嬉しそう」
最近、ちょっとあの二人が羨ましい。
恋仲となった葵と秀吉さんがお城で偶然会う度に、目配せや、挨拶を交わしながらもボディタッチをしたりしていて、とてもラブラブな感じだ。
お互い別々の御殿に住んでいて、デートは決まった茶屋で待ち合わせるらしいし、お城で偶然会えた時は、今みたいに二人とも本当に嬉しそうで、なんだかオフィスラブな感じだ。
社内恋愛ってものを一度はしてみたかったから、(この時代に来るまで、するものだと思ってた)本当に羨ましい。
だからここの所、信長様と私の恋愛を例えるなら何だろう。とよく考えてしまう。
安土城は会社みたいなものだから、社長と社員が身分違いの恋に落ちて結ばれた感じかな。
この時代のお城にエレベーターとかがもしあれば、偶然乗り合わせた時に、コソッと手を繋いだりなんかして、楽しめたのになぁ。
そもそも、出会った次の日から一緒のお城に住んだし、なんと言うか、その日のうちに抱かれてしまったし.......。確か一週間後には、夜は天主で過ごして、二ヶ月後には一緒に暮らして、月日は流れたけど、一緒に過ごした日々が一年にも満たない間に結婚したから......
何だか、よくよく考えると結構なスピード婚?
何か、今更だけど大恋愛をしてる気が........