第58章 合図
予定より早く城内の掃除が終わったので、気分を変える為にもそのまま針子部屋へと向かった。
女の勘は鋭い、私のイライラに針子達はすぐに気がつき、つついてきた。
夫婦間の事だし、特に信長様はお城の城主だから、あまり悪口も良くないと思ったけど、聞いて欲しい気持ちが勝り、既に仕事を始めている皆んなに手を動かしてもらいながら、ここ最近の信長様の変な行動を聞いてもらった。
「.................うーん、確かに、何かに怒ってるっぽいね」
一人が言うと、うんうんと、皆んなも頷く。
「何か、思い当たる事は?」
「ないよ。本当にここ最近いきなりだもん。しかも外出禁止」
「でも原因はアヤにありそうだけどな」
じっと、皆で私を見てくるけど、
「な、何?全然分かんないよ」
「この間、旅に行った時は?どうだったの?」
「.......その時だって別に楽しく...........あ、」
「「「何っ!」」」
私の「あ、」を合図の様に、皆が手を止めて私の周りに集まってきた。
「.........あ、うん、何か、帰り道で急に男に色目を使ったって言われて、機嫌が悪くなって.............あっ、でもその時だけで、その後は機嫌が治ったから.......」
「念の為聞くけど、男に色目、使う様なことしたの?」
「しっ、しないよ!男友達に一緒に会いに行って話をしただけで、信長様もずっと横にいたし」
そうだよ。あれだって急に機嫌が悪くなって、あんな苦しくなるキスされて.......
「その、男友達と話す時、女友達と話すみたいな感じで接してた?」
「う..ん。だって友達だし.....」
「会えて嬉しいとか言って泣いたり、抱きついたりしなかった?」
「え....抱きついてはいないけど....会えて嬉しいのは本当だからそう言ったし、相手の手は取ったかな。後は....感動して泣いた...と思う」
「「「あ〜、それだ!!!」」」
「あー、それはダメだよ」「怒られても仕方がない」「何か信長様可愛い」などなど、
口々に皆んなが納得し始めた。