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恋に落ちて 〜織田信長〜

第58章 合図



今朝もいい天気。

こんな日はお掃除がはかどる。

しかも外出禁止でストレスで、掃除をはけ口にするしかない。

隅々まで磨き上げるように、お城の廊下を雑巾掛けする。

「ふぅ、あとは、角を曲がった廊下で最後」

角を曲がりながら雑巾掛けをしていると、

「....................あ」

信長様と女中さんの姿が.....

声をかけようか迷っていると、信長様が私に気づいた。

はずなのに.......

「おい、」

信長様はぐいっと、女中さんの肩をいきなり引き寄せた。

「は、はい」

女中さんの頬が赤らむのが分かる。

「糸くずがついておる」

信長様は女中さんの肩の上についていた糸くずを取ってみせた。

「は、すみません。ありがとうございます」

女中さんは、真っ赤な顔をして何度も頭を下げ、逃げる様にその場から走り去って行った。


それを茫然と見る私の方に信長様は向き直り、ふんっと顔で示すとその場を後にした。


「な、何?なんなの?」

外出禁止に加え、さっきの態度。

ここの所、信長様はああ言った行動をとることが何度かあった。

ただの優しさからの対応なら分かるけど、あれは確実に私に対しての当て付けだ!

一体私が何をしたって言うの?全然意味が分からない。


今朝だって..............

ここ最近の信長様の変な態度で嫌な気分になっているのを変えたくて、髪を結び上げようと、髪をまとめ上げていると、

すっと、信長様が背後に立って抱きしめてきて、

「.............っ、信長様?」

そのまま何も言わずに、うなじに唇を押し当て、チクっと痕を落とした。

「なっ!何するですか?折角髪を上げようとしてたのに」

きっ、と信長様を睨むと、

「髪を結い上げるのも禁止だ。男を惑わす」

「はっ?何でそうなるんですか?」

「何度も言わせるな、貴様は本当に油断ならん」

不機嫌にそう言って、さっさと一人で朝餉に行ってしまい、付けられた痕を隠すため、私は髪を下ろすしかなくなった。


..........あー、思い出すだけでも怒れる!

きーーーーっ!!!!!

この連日の怒りの感情は雑巾掛けに向けられ、おかげで城内の廊下はピカピカだった。





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