第57章 忍びの旅
「............アヤ、.............アヤ、着いたぞ」
ゆさゆさと身体を揺すられ目が覚めた。
「..............はっ、私いつの間に寝て.....」
途中まで、信長様とお話ししていたはずなのに。
「くくっ、毎度の事ながら、馬に揺られ話しながら眠りに落ちるなど、貴様にしか出来ん技だな」
「す、すみません」
信長様の腕の中は温かくて本当に心地良くて、閉じ込められたら寝るものだと身体が記憶をしてしまっているのでないかと思うほどに、必ず遠出の時は寝てしまう。
「かまわん。それよりも着いたぞ」
信長様が顎でくいっと方向を示すと、
「あ.........」
立派なお城が道の先に聳え立っていた。
「.........立派なお城ですね」
「だな。城下も予想以上に賑わっておる」
信長様も感心した様に声にした。
「馬上にいては目立つ。ここからは降りて歩くぞ」
「はい」
そうだ、ここは敵地だ。気を引き締めなければ。
「でも、どうやって佐助君に会いましょう。城下に出てくるのを待ち伏せますか?」
スマホもないし、敵地に手紙を届けるわけにもいかず、取り敢えず来たけど、佐助くんと約束をしたわけではない。
「簡単だ。耳をかせ」
信長様はニヤリと笑うと、こそっと私に耳打ちした。
「.....................ええっ!本気ですか?」
「ああ本気だ」
信長様は更に口角を上げて、不敵に笑った。
そんな事して、大丈夫なのかな.............
信長様の案にいささか不安を感じながらも、私達は城へと歩き出した。