第57章 忍びの旅
安土は、佐助君の暮らす越後に比べると雪は少ない。
とは言え、冬なのはこの日本全土同じで、山道を超えて越後に入るのは困難な為、今回は越前の港までの僅かな雪の山道を抜け、そこから懇意にしている貿易商の方の貿易船(信長様の船だと身バレする為)に乗せてもらって海を渡り、越後へと入った。
そして、船から降りた私たちの目の前には、見事な雪景色が広かった。
そう、答えは越後でした。
サクサクと、雪用の履き物、深沓(ふかぐつ)を履きながら、私達は雪道を歩く。
「秀吉さんには、何て伝えたんですか?」
「アヤと旅に出ると伝えた」
「.............それだけですか?」
「どー言う意味だ」
「行き先は?」
「佐助の住む、春日山城に行くと」
わ、どストレートに言ったんだ。
「ダメだと言われませんでしたか?」
「いや、...............あぁ、何やら騒いでおったが知らん」
知らんって、それ、ものすごく怒ってたんじゃ.......
「全然説き伏せてないじゃないですか!」
つまりは、強行突破したって事?
越前の港まで見送りに来てくれた時も、何だか機嫌が悪そうだったのはそう言うことか。
いつか心労で、秀吉さんハゲたりしないかな。
本当に心配だ。せめて、葵の愛で癒されます様に。
「美味しい甘味でもお土産に買って帰りましょうね」
「そうだな」
雪道は歩きづらいし、鼻先まで凍りそうな程寒かったけど、信長様と繋いだ手は温かくて、何気ない会話を交わせる事が嬉しくて、このまま時が止まればいいのにと思った。
しばらく歩くと、光秀さんの手配した馬が小屋に繋いであり、目的地の春日山城までは馬で移動した。
当然の様に、そこに光秀さんはいなかったけど、光秀さんは、何かあった時の為に近くで待機をしているらしい。
いつも先回りして色々と手配ができる光秀さんは凄すぎて、やはり私には謎な人だ。