第56章 恋の指南
「貴様と出会う前に、数多の女を抱いたのは確かだが、今は貴様だけだ。それとも、以前の様に戻ってもいいと言いたいのか?それならば俺も考え直さねばならんが」
ニヤリと笑いながら、その手は再び帯を解き出した。
「っ、浮気したら、私も浮気します」
(そんな事絶対できないけど)
「ほぅ、それは、どこのどいつとする気だ。今のうちに其奴の首をはねておく必要があるな」
「う、うそです。冗談です。もう、怖い事言わないで下さい」
(目が怒ってて怖いよー)
「冗談でも言うな、次言ったら、この手足に枷をはめて、二度と天主から出さん。貴様を閉じ込めて俺しか見えなくなるまで啼かされ続けると思え」
「っ........」
楽しい会話のはずが、いつの間にか恐ろしい会話に.....
「それに、浮気をするなら手管が必要だが、そろそろかるちゃーすくーるの成果を見せてもらおうか」
信長様は、膝の上に座っていた私を膝立ちにさせ、私の顔を見上げて来た。
「先ずは、口づけてみよ」
逃げられない様に、腰と背中をガッチリと押さえ込まれ、唇が触れそうな距離で囁かれた。
「っ.................」
ドキンドキンと胸の音が煩い。
口づけようと口を開けた途端に心臓が飛び出してくるんじゃないかと思うほどで........
秀吉さんと葵のことを話す予定が何をどうしてこうなった?
でも、逃げ場もなく、信長様を悦ばせたい気持ちも本当で........
床上手でも何でもない私を、毎晩愛してくれる信長様に、少しでも良かったと思って欲しい。
覚悟を決め、信長様の肩に手を置いて、そっと、唇を重ねた。