第56章 恋の指南
信長様の膝の上で固まったままの私。
「どうした、あれ程急かしてきただろう」
信長様は私の顎を持ち上げて、本当に楽しそうだ。
「あ、あれは秀吉さんと葵の事を喜び合いたかっただけで.........この事では.......」
「は?閨で秀吉の事を話して何の益がある」
何か、久しぶりにその言葉を聞いた気がする。
「何の益もなくても、話したいんです。嬉しい事は分かち合いたいんです」
こんな状況にされる前に、手を取り合って楽しく話し合いたかったのに。
「いいだろう。奥の機嫌を損ねると後々大変だからな。言ってみよ」
「ほんと?」
「秀吉と貴様の友が恋仲になった話だったな」
「そうなんです。あんなに素敵な二人が恋仲になるなんて凄くて。安土一お似合いのって、っんん、信長様!?」
「何だ、聞いておる。話を続けよ」
「え、でも.......」
何で、首筋に口づけるの?
「聞くとは言ったが、何もせんとは言っておらん」
信長様は悪戯な笑顔を向けながら、膝の上の私を着物の上から撫で回し始めた。
「っん、またそんな事、話せなくなっちゃいます。他にも聞きたい事があったのに、っあ」
「かまわん。今日の俺は機嫌がいい。何でも聞くが良い」
もう、聞く気なんて全然ないとばかりに、信長様は帯を解き始めた。
「っ、安土一女性遊びが激しかったって、ほんとですか?」
「秀吉の事か?あながち間違いではないだろう」
「違います。信長様がです」
「は?」
信長様の帯を解く手が止まった。
「何だ、今さら過去の女どもにやきもちか」
「ち、違います。.......ちょっと、そんな話を聞いたから、気になっただけです。(実は結構気になったけど.....)」
「ふんっ、過去を気にするとは愚かな。しかも不確かな情報に惑わされるなど愚の骨頂だ」
「でも......」
(今、秀吉さんの事ならあながち間違いではないって不確かな情報を信じたじゃん)