第56章 恋の指南
皆んながいなくなり、葵と片付けを終え、いつもの様にお茶を飲んで休憩する事にした。
「今日の内容凄かったね」
まだ、興奮気味の私は顔の火照りが中々治らない。
「うん、でも本来ならお城にお輿入れする女性は、侍女や乳母から夜の営みについての講義や、子作りについての色々を学ぶって聞いてたから....」
葵は、先程とは打って変わり、涼しいいつもの表情だ。
「そうなんだ.....私何の講義も受けてないよ」
現代で言う保健体育の様なものかな。
でも、さっきのは内容が濃すぎたような。子作り指南って何を聞くんだろう。それを先に聞いてたら、この間のような事にはならなかったのかな、と、少し思ってしまった。
「このお城には、お姑様もいらっしゃらないからアヤは聞くことはないと思うけどね。それにもう、聞く必要も無さそうだし?」
悪戯な笑いを含みながら、葵はからかってきた。
「わぁ〜、そんなことはないよ。私はもう信長様から手管がないってはっきり宣言されてるから」
確かに信長様は凄いけど、その相手も百戦錬磨だとは思わないでほしい。
「待って、殿方って、手管がないとかそう言う事、はっきり言うの?」
葵の表情が突然曇った。
「えっ、どうだろう。普通は言わないと思うけど、私達の場合は、ちょっと話の流れでそうなったって言うか、からかわれてるって言うか.....」
「......そっか、そうだよね。普通は...言わないよね」
今度は安堵の表情。
やっぱりおかしい。
「葵......もしかして....誰か恋仲の人がいる?」
私の問いかけに答えるよりも分かりやすく、葵の顔は真っ赤になった。
「やっぱり!えっ、どんな人とか聞いてもいい?」
こんな才色兼備を射止めるなんてどんな男性なんだろう。
すっごーーーーく気になる。
乗り出す様に葵の顔を覗き込んだ。