第56章 恋の指南
講義の内容は、武術〜美容の事まで多岐に渡り書いてあり、本当にプロ彼女育成講座の様な内容だった。
この時代間諜とは、時に敵の城へと潜り込んで情報を得る為、様々な人物を演じる必要がある。
失敗とは死を意味する彼女達に、出来ない事などはないのかも知れない。しかも麻さんは、あの光秀さんの所の間諜だ。きっとプロ中のプロなんだろう。
私なんかでは考えられないほどの厳しい鍛錬と努力をしてきたであろう、美しく、艶やかな麻さんに目を奪われてしまった。
とは言え、麻さんの提示した内容の中に、ものすごーく気になる項目が何個かあった。
その中でも[床上手]と言う項目に、とんでもなく興味を惹かれた。
床上手って、床上手だよね?
夜の営みの中で、相手を悦ばせる事だよね?
どうしよう、すご〜く気になる。
................けど、「これがいいです」とは恥ずかしくて言えない。
しかも今日が1回目の講義でいきなりはないよね。
みんなはどれが良いと言うのかな。
もう、[床上手]と言う項目しか目に入らなくなった私は、みんなの意見を待つことにした。
........:.でも何故か、誰も何も言わない.........
しばらくの沈黙の後、
「..........これを、お願いします」
細くて白く長い指が、[床上手]を指した。
!?
バババっと、みんなの視線がその指の主へと注がれる。
「あっ、葵!?」
まさかまさかの葵が、顔を赤らめながらも私が一番気になっていた項目を選んでくれた。
「あ、......うん、知っておいた方が良いかなって」
更に顔を赤くして葵がボソッと言った。