第55章 怪我の功名
「未来から来た女は、月のものがないのだと思っておった」
「え?」
「いや、単に貴様を毎晩気にする事なく抱けて良いと思いたかったのやもしれん」
それは、私も少し考えた事がある。
視察や戦でいないならまだしも、一緒に寝て過ごすのに、約五日間も信長様に我慢させられるのかとか、私も我慢ができるのかとか、自信ないけど他の方法でしないとダメなのかとか色々.......
ある意味、楽だと思っていたのも事実で......
「私も、来ないなら来ないで楽だなぁ位にしか考えてませんでしたから。反対に、信長様がその事に気付いていた事に驚いた位です」
「貴様を抱けぬのは、俺にとって死活問題だからな」
いたずら気に笑うと、指輪のはめられた指を軽く噛んだ。
「んっ.........、あの.........」
「アヤ」
そのまま指が絡められ、ギュッと手を握られた。
「これを貴様の指にはめた時に、貴様を一生幸せにすると誓った。だからこそ、どんな些細な変化でも隠すな」
ドキンッ
「.............はい。心配かけてごめんなさい」
「もう離れることも、傷を負う事も許さん」
そう言って信長様は、絡めた私の手の甲にちゅっと音をたてて口づけた。
ドキンッ
「っ....あの」
嬉しさと、恥ずかしさと、心臓がもう爆発しそうにドキドキする。
「ふっ、真っ赤になる程には回復した様だな。とりあえず食え。何事も身体が資本だ」
散々甘さを与えられた手が漸く解放され、二人で冷たくなった七草粥を食べた。