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恋に落ちて 〜織田信長〜

第55章 怪我の功名



天主が、一瞬無言になった。

(ここに?)

不思議に思ってお腹に手を伸ばすと、もう一つ別の手と重なった。

(あ.......)

それは、信長様の手。

お腹の上で手を重ね合い、見つめ合った。


「ただ、断言はできない」

二人の世界に入り込む前に、家康は言葉を続けた。

「あんたが戻ってきてまだふた月にも満たないのに、いくら何でも早すぎるとも思う.....」

確かにそうだ。

ピルを飲むのを止めたのもまだひと月位で、飲むのをやめた途端に赤ちゃんはできるものなのかも分からない。

「だから暫くは様子を見て、公言するのは待った方がいいと思う。政宗さんや台所にいた女中達にも口止めをしておいたから」


「いつ、分かる?」

信長様が家康に聞いた。

「俺も詳しい事は、ただこのまま月のものが来なくて、吐き気や、眠気や怠さなどの悪阻の兆候が続けば、断言できると思います」

(そうなんだ....。妊娠するって事について何も知らないな)

家康の言葉に感心していると、

「月のものなど、アヤには一度も来たことなどないが」

!?
いきなり、信長様がとんでも発言をした。

「わっ、信長様」

慌てて口を塞ぐけど、時すでに遅しで...

「は?」

家康もびっくり顔でこっちを見た。

「いや、あの.....もともと不順で、ここに来た頃は、体重が減少したり、慣れない暮らしで体も疲れてたから止まってたみたいで....」

しどろもどろだ。何で自分の生理不順を武将二人の前で説明しないといけないのか...しかも私の生理のない事に信長様が気付いてたなんて。


「なぜそれを早く言わぬ」

「え、だってそんな事男の人に話す事ではないと思ってましたし、気にしてないと思ってたから.....」


ふぅ、と信長様は軽くため息をついた。


とりあえず、未来に戻っていた一年間は、薬(ピル)を飲んで生理不順を正常に戻していた事や、その薬(ピル)の副作用で避妊効果もあったことなども、二人には話した。


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