第55章 怪我の功名
「体調悪いって?」
呆れ顔の家康が信長様の横に腰を下ろした。
「う...ん、吐き気があったんだけど、でもさっきよりは大分良くなったよ」
(信長様にキスされたからなんて絶対に言えない)
家康は私の手首を取って、脈をはかりだした。
「脈はちょっと早いな。少し熱っぽいし........ただ今回は、薬は処方できない」
家康の煎じてくれるお薬は、はっきり言って苦不味い。
いや、この時代のお薬は全部まずいのかも。だから、処方できないと聞いて嬉しかったけど............
「何で?」
いつも、どんなに嫌がっても無理やりにでも飲ませてくるのに、何で処方できないのか気になった。
「あんた、気がついてないの?」
「何に?」
「何って.........」
家康は、呆れと戸惑いをその顔に交互に滲ませながら、私と信長様の顔を順番に見た。
「女中や政宗さんが、今朝のあんたの様子を見て、あんたのお腹に.......いるんじゃないかって....」
「いるって何が?」
「ほんと鈍いね。だから、赤子が....いるんじゃないかって....」
言い辛そうに顔を背けて家康は言った。
「.............え、......あ、赤ちゃん⁈」
私のお腹に⁉︎