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恋に落ちて 〜織田信長〜

第55章 怪我の功名



天主へと戻り褥へと寝かせてもらう。

暫くすると、隣のお部屋にお膳が運ばれてきた。

「家康を呼べ」

信長様が女中さんに指示を出すと、「かしこまりました」と女中さんが返事をして部屋を出て行った。


「貴様も少しは食え」

信長様は2人分の膳を持って部屋に入ると、布団の前に置いて座った。


「うーん、あまり食欲がなくて、信長様だけでも先に召し上がって下さい。早く食べてほしいし」

「そうか、貴様が作ったのだったな」

焦らせる私に笑いながら、信長様はお腕の蓋を取った。

気になって体を起こして覗き込むとやっぱりもう冷めてしまってる。
電子レンジやカセットコンロがあれば.......


「何だ食べたいのか?」

「いえそういうわけじゃ、ただ、やっぱり冷めちゃったなって思って」


「ちゃんと、見た目は粥になっておるな」

「もう〜、当たり前です!お料理は全く出来ない訳じゃないんです」

信長様は拗ねた私を見てふっ、と笑うと、匙でお粥をすくって口に運んだ。こんな所作もやっぱり綺麗でドキンと胸が跳ねた。

「どうですか?」

信長様に初めて食べてもらう手料理。

「美味い」

「ほんと?」

「あぁ、だが.......」

チラッと私を見ると、

「..........んっ」

急に頭を引き寄せられ、ちゅーーと、軽く吸われる様な口づけをされた。

「貴様の方が美味い」

ちゅっと、唇を離して悪戯な笑みを浮かべる。

「............っ」

悔しいけど、一瞬体調が治ったみたいに甘さが広がった。

「まだ、足りん。もう一口、食べさせろ」

顎を掴まれ、顔を引き寄せられる。
この言葉と目に囚われて逃げられるはずがない。

目を閉じて、甘い誘惑の世界の入り口に入りかけた時、

「はぁ〜、家康ですけど、体調悪くないなら戻りますけど」

襖の外から呆れた家康の声が聞こえて、現実に引き戻された。

「!?」

信長様はまた悪戯顔でぺろっと、私の鼻先だけ舐めると、家康に部屋に入る様に言った。


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