第55章 怪我の功名
広間へ行くともう信長様の姿が。
「信長様、おはようございます」
ほんの数時間離れただけなのに、顔を見たら嬉しくて、ドキドキする。
「ちゃんと、起きられた様だな」
起きていきなり居なくなっていると、信長様は心配されるから、今朝の事は昨夜気を失う前に、信長様に伝えておいた。
「ふふっ、正直な感想を聞かせて下さいね」
まだ少し気分が悪かったけど、悟られない様に笑顔を作ると、すっ、と首元に手の甲をあててきた。
「信長様?」
「少し、熱がある様だな」
「えっ?大丈夫です。これ位すぐ治りますからって、きゃあ!」
身体は直ぐにふわりと浮いて、信長様も立ち上がっている。
「天主に連れて行く」
「えっ!せっかくお粥を作ったのに」
「貴様と天主で食べる。それならば問題はないな」
「でも....」
今すぐでも感想を聞きたいのに、天主に運んでる間に冷めてしまわないかな。
「ふっ、多少冷めたところで貴様が作った事に変わりはない。美味いに決まっておる」
「でも........」
「それ以上言うと、皆の前で泣くほど口づけるが良いのだな?」
「やっ、それはダメ」
本当にダメ、そしてやりそうだ。
それに体調が悪いのは本当で、信長様も心配そうだから、濃厚な口づけ攻めに合う前に、大人しく天主に戻る事にした。