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恋に落ちて 〜織田信長〜

第55章 怪我の功名



何とかお米を研いで、火をつけて蓋をする。

少し経つと、グツグツと音がしだして蓋が踊る様に動き出した。

そしてお米の炊けてくるいい匂い。

........と思ったけど....

(何か気持ち悪い。お米の炊ける匂い好きなのに、変だな)

気持ち悪さはその後も続いたけど、心配をかけたくないのと、最後まで自分で作って信長様に食べてもらいたかったため、こみ上げる吐き気を我慢しながら、細かく刻んだ七草を入れて火を通し、七草粥は完成した。


「おっ、出来たな」

政宗は匙ですくって味見をした。

「上出来だ。お前も食ってみろ」

そう言って、一匙すくってくれた。

「ありがとう.....................................ぅっ、ごめん政宗」

口元に持っていくと、更なる吐き気がこみ上げて、その場に匙を置き、厠へと走った。


「あっ、おいアヤ」

政宗の声が聞こえたけど、もう限界で.....


そんな私の様子を見ていた女中さんが、
「政宗様、もしかしてアヤ様は....」
と政宗に言った一言がきっかけで、ちょっとした出来事に発展するとは、その時の私は思ってなかった。




・・・・・・・・・・・

「政宗、ごめんね。いきなりいなくなって」

まだ少しムカムカするけど何とか気分を落ち着け、厠から台所へと戻った。


「大丈夫か?辛いなら無理するな」

政宗が優しく微笑む。

「あ、うん。でもあと膳を運ぶだけだし、後片付けもしないと」

私が厠に行っている間に盛り付けてくれた膳を運ぼうと手をかけると、

「いけませんアヤ様」

女中の皆んなが慌てる様に止めてきた。

「えっ?あ、盛り付けまだ終わってなかった?」

「いえ、膳は私達が運びますし、後片付けは私たちの仕事ですので、アヤ様はもう広間へとお戻り下さい」

「でも、作るだけ作って後片付けしないのは、それに広間に戻るなら、膳は持っていけるよ」

皆んなが私に気を使っていると思い、もう一度膳に手を掛けると

「ダメだ、お前はそのまま広間へ戻れ。まだ気分は回復してないだろ?それと、後で家康に診てもらえ」

政宗までストップをかけてきたから、これ以上は何も言えず、皆んなにお礼を言って広間へと戻った。



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