第55章 怪我の功名
信長様は、本当に毎晩求めてくれるし、それは嬉しいけど、政宗や他の武将達もみんな、信長様の様にあんなに....凄いんだろうか.....その、色々と.....
ちょっとだけ、武将達の夜を想像してしまった。
「誰にでもってわけじゃないが、惚れた相手なら毎晩味わい尽くす、逃がさねぇよ」
いきなり政宗が私の想像に答えてきた。
「へっ?」
なに?
「お前は、心の声を漏らしすぎる。まる聞こえだ」
「うそっ!」
(光秀さんも同じ事言ってたけど)
「俺の事が好きだって聞こえた。人妻になったお前も悪くない。いつだって相手になってやる」
爛々とした眼をして、一気に間合いを詰めてくる政宗。
「もう!そんな事考えてないし、言ってません。だから顔が近いってば」
グイグイと政宗の顔を手で押して遠ざける。
「何だ、俺はいつだって本気だ」
政宗の冗談は本当に心臓に悪い。こんな整った顔が間近に迫れば、好きじゃなくたってドキドキするに決まってる。城下の女の子達がざわつくはずだ。
「ほら、時間がなくなっちゃう、ご指導お願いします」
政宗の体をまな板の前まで押して七草粥の作り方を始めてもらった。
別に、七草粥の作り方を知らない訳ではない。
お米を研いで、七草を細かく刻んで、お粥を先に作ってその後で七草を入れて煮て、火が通れば出来上がり。
でも、この時代の器具の使い方がわからない。
薪のくべ方も、大きな釜も、火加減も、大人数分の作り方も。
信長様に食べさせたいから、一人分と言うわけにいかない。お城は大所帯だから、分量が全く分からない。
政宗にはそう言った事も今日は教えてもらう事になっていて、だから、簡単に作れるお粥から始める事にした。
「冷たっ!」
水が冷たすぎで、身体がキュっと縮こまる。
簡単に蛇口を温にすればお湯が出る時代と違って、井戸水や湧き水が基本のこの時代、七草を洗ったり、お米を研ぐだけでも冷たくて大変だと言う事がよく分かった。