第55章 怪我の功名
今日は七草粥の日
お料理の出来ない私でも作れそうな七草粥位は、ちゃんと作って信長様に食べてもらおうと思い、政宗に教えてもらう事にした。
信長様を起こさない様に、何とか早起きをして台所へと向かうと、政宗をはじめ、お食事を担当する女中さん達が集まり作業を開始していた。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
一礼をし、着物をたくし上げ、髪を結び上げて気合を入れる。
「おぅ、ちゃんと起きれた様だな」
政宗が偉い偉いと言いながら、頭を撫でてくる。
「もう、子供じゃないんだから起きれたよ」
既に人妻だと言うのに(一度言ってみたかった)いつまでも城の武将達は私を子供扱いだ。
「お前まさか、早起きするために昨夜は信長様を拒んだ訳じゃないよな?」
政宗は、私の頭に手を置いたまま、ん?と言った感じに探る様に覗き込んできた。
「なっ......そんな事.....」
あまりにあけすけな質問に、口だけがぱくぱくと動く。
そりゃあ、起きられなかったらどうしようと思って、昨夜は更に抱き続けようとする信長様にもう無理だとは伝えたけど、結局そう言って聞いてもらえた事なんて一度もないもん。だから、言う位のささやかな抵抗は許してほしい。
「ま、政宗には関係ないもん」
鋭い突っ込みを入れられて動揺したけど、なんとか返答すると、
「まぁ、お前の焦り方でよく分かった。疑って悪かったな」
分かりやすく口の端を上げて、政宗は可笑しそうに笑った。