第52章 安土の奇跡
「私に、何かしてほしいことがあるの?」
〈僕の羽を探して欲しいんだ〉
「あ.........これの事?」
天使の背中の欠けてしまった羽のあとを触る。
〈そうだよ。〉
「でも、どうやって」
〈港を探して、羽はそこに落ちてるから〉
「港......................って、湖の?」
そう言えば、商人の人も積荷を降ろす時にって言ったような。でも、そんなざっくりとした情報だけで探し出せるかな。10センチにも満たない水晶のかけらを........
〈お願い、時間がないんだ。今夜中に見つけて帰らないと間に合わないんだ〉
「帰るって、どこに?」
〈僕は元々、フランスの教会に納められる予定だったのに、何かの手違いで日本に来てしまったんだ。僕たちは7体の天使で、僕が戻らないと揃わない。でも羽がないから戻れないんだ。お願いアヤ、僕の羽を探して。明日のクリスマスイブまでに戻らないと、子供達の夢を叶えてあげられないんだ〉
足の裏に彫られた3の数字を思い出した。
彼は3番目の天使。きっとみんな揃わないと天使の力が発揮できないんだ。
この時代の、しかもフランスのクリスマスがどんなものかなんて分からないけど、きっととても重要なことなんだ。
「.................分かった。頑張るから、力を貸してくれる?」
〈ありがとうアヤ、僕を港に一緒に連れてって〉
「うん。行こう」
急いで道中着を着て天使を抱え、天主を出た。