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恋に落ちて 〜織田信長〜

第52章 安土の奇跡



今夜も遅くなるから、夕餉も先に食べて、先に休んでいろと、信長様からの伝言をもらい、天主に一人戻った。



誰もいない天主の信長様の机には、昼間商人の方から頂いた水晶の天使。

行燈の光でも綺麗に輝いている。

そっと手にとって折れた羽を見ると、とても痛々しそう。

「きっと痛いよね.....ん?」

天使の足の裏に何かが彫ってある。

裏返してみると

「3?」

数字で3と彫ってある。

「他にも、何体か作られたのかな」

何かの縁でこの日本にやってきた天使。

「よろしくね」

なでなでと、天使の頭を撫でて机の上に戻した。

「うーん、信長様はまだ戻らないし、湯浴みでもしてこようかな」

信長様のいない天主はつまんなくてどうしようかとウロウロしていると、

〈..............して〉


「?」


〈..............,がして〉


「...........なに?」

なんか、声がする?

どうしよう、お化けの類はかなり苦手。

ちょっと怖いと思いながら、周りをキョロキョロすると、明らかに、行燈の灯の光とは違う光り方をした水晶の天使像が....


もしかして........呪いの水晶とか、そんな感じ?


信長様が戻るまで、見なかったことにしようと思い、天使から背を向けると。

〈ヒドイ、僕を見捨てるの?〉

はっきりと、声が頭の中に聞こえてきた。

きゃーーーーーー!!

「ごめんなさい、ごめんなさい、私本当にお化けとか苦手なの!!ごめんなさい........」

困った時の南無阿弥陀仏を頭の中で唱えながら必死で叫んだ。


〈僕はお化けじゃないよ。お願い、僕の声が届いたのはアヤがはじめてなんだ〉


お化けじゃないと言う言葉を信じたわけではないけど、声が必死で、少しだけ恐怖心が和らいだ。

「何で.....私?」

〈分からない。でも、この国に来て誰に話しかけてもダメだったのに、アヤ、君は気づいてくれた〉

「そうなんだ...」

できれば私も聞きたくなかったけど、この天使を見た時から何か心惹かれるものがあったから、何かの縁を感じた。


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