第51章 眠れない日々
運命の日はやって来た。
こんなにも何かを待ち望んだ事は無いほどに、この日は違う意味で寝られぬ夜を過ごした。
安土城のどこかと言われても全く見当がつかない。
他の奴らも我れ先にアヤを見つけ出そうと、城中をウロウロしている。
だが、アヤは自分が一番に見つける自信があった。
案の定、中庭から木々の折れる音が聞こえて来た。
どの木かなんて探さなくても、直ぐに俺には分かった。
その木は、アヤがまだ安土に来たばかりの頃、棘の刺さった足で俺が天主から投げた着物を取ろうと登った木だ。
「うーん。どうやって抜け出そう」
木の上からは、一年ぶりに聞く呑気な声。
俺が下にいるとも気づかず、木々に絡まった体をどうしようか考えているらしい。
本当に、間抜けな奴だ。
パチ、パキッと、木々は待ってはくれない。
その内落ちてくるでろうアヤを俺は木の下で待った。
「えっ、マジですか?」
焦ったアヤは、身体をいきなり起こした。それが一番いけない行為だとは知らずに。
「きゃぁー」
バキッと枝は大きな音を響かせ、アヤは俺の腕の中へと落ちて来た。
ドサッ
「っ、........信長様....」
変わらぬ愛おしいアヤの顔。
「久しいなアヤ、相変わらず手のかかる奴だ」
本当に、変わらんな貴様は...
「うー」
ほら、やはり貴様は泣こうとする。
「少し、太ったな」
だから、泣くよりは怒らせたほうがマシだ。
アヤは、声にならない声をあげ、慌てて俺の腕から降りて離れた。
「なんだ、気にしておるのか?抱き心地が良くなったと言っておるのに」
膨よかになれる環境で暮らせていたのならば、良かった。
「でも、太ったはひどいです。やっと会えたのに」
よほど気に障ったのか、アヤは顔を赤らめ俺を恨めしそうに見て睨みつけた。
「こっちへ来い。べたべたに濡れておる上にその格好、先ずは着替えよ」
未来の格好は、露出も高く寒そうで、一刻も早く着替えさせたかったが、アヤは急にふさぎ込む様に何かを考え出した。