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恋に落ちて 〜織田信長〜

第51章 眠れない日々



「何を考えておる」

アヤがもう消えていなくならない様に抱きしめた。

「ちゃんと、みんなにお別れが言えなかったなって」

悲しそうに俺の腕を握る手に力を込めた。

「貴様の帰る場所はもとよりここしかない。誰も悲しみはせん」

俺が、貴様を幸せにする。

「っ、だから、今度こそ本当に離さないでください。私は、信長様に起こしてもらえないと、朝も起きられないんです」

分かりきった事を......

「分かっておる。貴様をもう危険な目にはあわせぬし、離さん」


「約束ですよ」


「約束だ。..........とりあえず、寄越せ」


もう、夢ではない。
一年ぶりに触れる唇は、甘くて、柔らかくて、愛おしくて.......アヤが寒さを訴えくしゃみを耐えきれなくなるまで、無我夢中で喰いついた。


俺の袂で揺れる金の指輪をアヤの指にはめるまでは、予想外に時間がかかることになる。

この時はまだ、俺が思いの外、毛利とアヤとの関係を疑う事も、アヤが他の女と俺が婚姻を結ぶと思っていたと言う事も知らずで、妻とするまでに一悶着するとは思っていなかった。




・・・・・・・・・

「ふっ、本当に貴様は悪女だな」

初夜を済ませ、深い眠りにつくアヤの頬を軽く摘んだ。

「ん.....」
アヤは再び不快そうに顔を動かす。


アヤの左手を取ると、薬指には俺のはめた手鎖が。
俺の指にもアヤにはめられた手鎖が光る。


その手を繋ぎ絡めて口づける。

「愛してる。永遠に......」


こんなにも誰かを愛する日が来ることも、己の弱さに気がつく事も、何かを待ちわびる気持ちも、アヤ、貴様に出会わなければ分からなかった。


貴様の残像に苦しみ眠れぬ夜はもう要らぬ。

「これからは、共に眠り、共に起きよう.....いや、朝は俺が起こすのか」


まあ良い、とりあえず今日はゆっくりと眠れ。

貴様と離れた一年分、これからゆっくりと満たしてもらおう。

貴様の顔が困り果てて真っ赤になろうと、知ったことか。

俺は常に貴様に飢えている。

「覚悟しておけ、アヤ」


もう眠くはないが、アヤを抱きしめその温もりを感じながら、俺は再び目を閉じた。

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