第51章 眠れない日々
夏が過ぎ、秋を迎える頃、播磨、但馬と軍は駒を進め、長期戦を見越して俺は一旦安土に戻った。
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「信長様、ここにおいででしたか」
稽古場で剣を振っていると、秀吉が入ってきた。
「なんだ」
「全ての署名が揃いました」
秀吉が差し出したのは、アヤを俺の正室とすることを承認する旨を示した、織田家の親族、重鎮、傘下の大名全ての署名が書かれた承認書だった。
「.........よく、皆を納得させたな」
「ここ最近の織田軍の快進撃は、目を見張るものがありましたから。信長様のお力だけでも天下統一を果たせると、誰も疑問には思っておりません。異を唱えるものはおりませんでした」
「後は、奴が戻るのを待つだけだな」
「今、あいつ何してるんですかね」
「ふっ、呑気に昼寝でもしてそうだな」
そうだ、貴様はただ呑気に笑っていればいい。
早く戻って来い。その時はもう二度と貴様を離さん。
袂には、二つの金の指輪。
手鎖の様に、これを貴様の指にはめてやる。
二度と逃げられない様に....
失わない様に....