第51章 眠れない日々
佐助はその後、約束どおり上杉との国境近くで光秀に一通の手紙を渡した。
それによると、わーむほーるが現れるのは一年後の安土城のどこか。アヤがわーむほーるに自分で気づき飛び込まなければ戻れる可能性はないことも記されていたが、奴は必ず戻ると信じて疑わなかった。
アヤをこの手に取り戻せる事が分かれば、おのずとする事が見えてくる。
もう迷いはない。
天下もアヤもどちらも手に入れる。
先ずは毛利に一矢報いる。
二度とアヤに手出しできぬように、奴を徹底的に潰す!
直ぐに毛利の領地となる中国攻めを開始すべく、準備に入った。
同じ頃、武田信玄からは、休戦の申し入れがあった。
今回の騒動の発端となった甲斐の虎からの申し入れは受け入れ難いものがあったが、中国攻めに力を入れる事ができる利点を踏まえ、申し入れを受ける事にした。
軍備の手配に軍の強化を行い、満を持して中国攻めを開始した時には、既に春となっていた。
毛利との国境付近に陣を構えるため、途中の京、本能寺で一夜を過ごした。
アヤに最初に命を助けられた場所だった。
あれから一年。
あの時の変な女に、こんなにも恋焦がれる事になるとは思わなかった。
どうしようもないほどに、心が渇く......
アヤで満たされていた心は既に空っぽになり、今は毛利軍の血で満たすしか俺を保てない。
残虐な俺を抑える者は今はここにはいない。
それでも、目を瞑ればアヤの優しく甘い声が聞こえる。
『信長様』
もっとだ
『信長様、好き』
もっと、俺を呼べ。そして....満たしてくれ。
アヤ.........
毛利との戦はその後も長く続く事になる。