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恋に落ちて 〜織田信長〜

第51章 眠れない日々



「俺の主君は上杉謙信公。しかし、上杉は今回の件に加担してはおりません」

「武田を匿っておるのであれば、同じことだ」

刀を抜くと、佐助に向かって真っ直ぐに構えた。

「俺の話を聞いてください。これは、アヤさんの友達として俺が取った単独行動です。数日前に、ワームホールの出現を確認してアヤさんに知らせようと思った時にこんな事が起きて.....結果、間に合わなかった」

表情からはあまり読み取れぬが、男は項垂れ、悔しそうに呟いた。

「貴様は、この時空の歪みが計算できると言うのか?」

奴の言葉に興味を引かれ、刀の構えは崩さず問いかけた。


「出来ます。俺はこの時代に来るまでは宇宙物理学と言う学問を勉強していて、一定の法則と原理に当てはめ計算すれば、次に起こるワームホールも予測する事ができます」

来た頃のアヤと同じ様に、訳の分からぬ言葉を時折混ぜては話す男の言葉を信じようと思った。


「面白い。貴様の話を聞こう」

刀を収め、俺はその場に座り、佐助の話を聞いた。

次のわーむほーるの出現を予測するには一度戻って計測し直す必要があるため、10日ほど時間が欲しいと佐助は言い、その結果は光秀が上杉との国境近くで佐助から受け取ると言う事で話はついた。


「佐助、貴様この様なことをして、越後の龍に咎められはせんのか?」

立ち去ろうとする佐助を呼び止めると、佐助は振り返り暫く無言で立ち止まった。


「おいっ、聞いておるのか?」

「あ、すみません。歴史上名高い織田信長にまさか自分の名前が呼ばれる日が来るなんて思ってなかったので、感無量で.....、謙信様の事なら心配には及びません。俺はある程度自由に動かせてもらってますし、アヤさんは大事な現代人仲間なので」


アヤもそうだが、佐助も変わった奴だ。
敵味方関係なく助け合い情報交換ができ、何よりも人を疑うより信じようとする力強さがある。


「貴様にはいずれ、何かの形で礼をする」


「いえ、礼には及びません。友として当たり前のことをしているだけですから」

少しだけ変化のない表情を緩めると、佐助はその場から姿を消した。

500年後の奴らは皆こうなのだろうか。

見てみたいものだな。



佐助がいなくなり、俺たちは金ヶ崎城で兵たちを休ませ後日安土へと戻った。
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