第50章 初めての夜
「...........................っ.............ええっ?」
天主へ戻り閨の方へ入ると、大変なことになっていた。
「なっ............なに?」
どう説明すればいいのか......
まずは、お布団。
新調されたのかな?いつも以上にふかふかで、真っ白になってる。
今までは、艶やかな柄のお布団だったのに、いきなり純白って......
あとは照明となる行燈の赤みがいつもより強くて、これが部屋を妖しく照らしている。
ほとんど使ったことはないけど、脱いだ着物を置く木箱も赤を基調とした漆の箱に変えられていて(普段は黒を基調としている)、部屋全体が艶っぽくされていて、どうぞどうぞと言われているようだ。
何だか、ラブホテルのコンセプトルームにあったら話題になりそうな雰囲気を醸し出している。
「言ったであろう?初夜が楽しみだと」
驚く私を笑いながら信長様が覗き込んできた。
「こっ、これを女中さん達が?」
可奈さんの顔が一番に思い浮かんだ。いつも私と信長様の事を一番に考えてくれる、大切なお城の女中頭さん。
「貴様が奥となり、安土で迎える初めての夜だ。皆気合いが入っておるに決まっておる」
城の御館様が伴侶を迎える夜の大切なセレモニー。
私を、みんな信長様のお嫁さんだと認めてくれたんだと思うと、鼻の奥がツーンとなった。
「結婚って、お城のみんなにとっても、大切な事なんですね」
「そうだ。俺だけじゃない。皆が貴様を必要としている」
「私、てっきり信長様が勝手に初夜と言って、あれこれ企んでるんだと思ってました」
「貴様は......人を盛りのついた犬のように言いおって」
少しムッとした顔をすると、信長様は私をまっさらで真っ白な褥の上へと降ろした。
「ふふっ、ふかふか。信長様、私、いい妻になれるように、がんばりますね」
「ふっ、貴様はそのままでいい。頑張るとろくなことが無い」
「ひどいっ!まずは早起きから頑張ろうと思ったのに」
奥さんらしく朝ごはんとか作りたいし
「一番できんやつを頑張ろうとするな。それに貴様を起こすのは俺の朝の楽しみだ」
「............っ」
ほら、そうやってまた甘やかすから....私はきっとこれからも起きられないままに違いない。