第50章 初めての夜
針子部屋に挨拶に行くと、皆から沢山の祝福の言葉を貰った。中には泣いてくれる子までいて、本当に、結婚する事を知らなかったのは私だけだったかのように、当たり前に私を信長様の奥さんとして迎え入れてくれたみんなに感謝で一杯だった。
そして夜になって、近しい人たちを招いたお祝いの宴が催された。
広間には、政宗が腕によりをかけた料理が並べられている。
「わぁ、美味しそう」
次々と運ばれる料理全てが美味しくて、箸を休めるとこなくパクパクと食べていると
「ぷっ、.....祝いの席で、大口開けてバクバク食べる女、初めて見た」
またもや意地悪な言葉が.....
「家康!?」
「あんたの神経ってどうなってんの?」
さも可笑しそうに笑う家康。
確かに...結婚したとは言え、座る席も横にいる人も何もかも変わらないから、奥方様と言う言葉以外は全然緊張感はなくて、いつも通りに振舞ってた。
「それだけ俺の作った料理がうまいって事だよな」
そう言いながら、料理の支度を終えた政宗も信長様の前にどかっと座った。
家康もその横に座ると、政宗と同時に頭を下げた。
「信長様、此度はおめでとうございます」
わぁ..............
「貴様らにも色々と動いてもらった。礼を言う」
..........なんか、結婚した実感がまた湧いてきた。
政宗と家康が交互に信長様にお酒を注いで、それを飲み干すと、信長様も家康にお酒を注ぎ、ぐいっと家康もそれを飲み干した。
「アヤ、家康の言う事は気にせず沢山食えよ。お前の好きなもんばっかだろ?」
政宗が私の方を向いて、もっと食べろと顔で合図をしてきた。
「うん、ありがとう。本当に美味しいから食べ過ぎちゃって」
「太って信長様に嫌われたら俺が貰ってやるから安心しろ」
「えっ?それは困る」
(やっと織田アヤになったのに)
「まぁそんなにがっついて食べてたら時間の問題なんじゃないの?」
家康まで.....
「信長様っ」
助けを求めて信長様の名を呼ぶと、
「貴様はもう少し太ってもいいぐらいだ。もっとしっかりと食べておけ。夜がもたんぞ」
「!!!!?」
ピューと政宗は口笛を吹き、家康はわかりやすいため息をついた。
私の顔は真っ赤で、助けを求めたことを大後悔した。