第50章 初めての夜
「今夜は、身内だけのお祝いの席を設けましたので」
秀吉さんにそう言われ、私たちはひと先ず天主へと戻った。
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「わぁー戻ってきた気がする〜」
信長様との二人旅も楽しかったけど、この部屋に入ると、やっぱり家に戻ってきた様な、ほっとした気持ちが広がった。
「あー懐かしい安土の景色。ただいまー帰ったよー」
外に広がる湖の景色が更に郷里愛を深めてくれて、くすぐったい。
「外の景色一つでそんなに喜べるとは、安上がりな奴だ」
安土の景色を抱きしめる様に手を広げる私の横に立ち、信長様が笑う。
「えー、この景色を見ると帰ってきたーっ、て気になりませんか?」
「俺は、貴様を抱きしめて、その匂いを感じた時が、帰ってきたと思える」
ぎゅっと、突然私を抱きしめると、首筋の匂いをくんくんと嗅ぎ出した。
「わーっ!!」
慌てて体を離そうと体を捩るけど、がっしりホールドされて動かない。
「やっ、旅帰りで埃っぽいし、その....」
季節的に汗はかいてないと思うけど...匂いはできればどんな時も嗅がないでほしい。
「ふっ、貴様からは甘い匂いしかせん」
チクッと、何故かわずかな痛みが首すじに走る。これは間違いなくあれだ!
「信長様っ、そこに痕はつけないでっていつも言ってるのに!」
今夜も宴があるのに、またからかわれちゃう。
「俺を惑わす匂いを放つ貴様が悪い」
へっ?何言って....
気が付けば、既に押し倒された様な体制で、信長様は帯に手を掛けようとしている。