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恋に落ちて 〜織田信長〜

第50章 初めての夜



デジャヴ?

こんな景色、ちょっと前にも見たような....


「「「信長様、奥方様、お帰りなさいませ」」」

なっ、何?

「秀吉、分かりやすい奴め」

信長様は可笑しそうに笑いながら馬から降り、私も馬から降ろしてくれた。


秀吉さんが、私たちに駆け寄って来る。

「信長様、奥方様、お早いお帰りで。首を長くしてお待ちしておりました」

おっ、奥方様ーーーーーーーー!!!

聞き慣れない言葉に呆然とする私をよそに、信長様は秀吉さんに話しかける。

「ふんっ、貴様の嫌味など通じん。あんな紙を寄越すとは、俺がいない間、よほど暇だったと見える」

「予定を過ぎても何の連絡もなしとは、嫌味の一つでも言いたくなります」

「嫌味を言うなら俺だけにしろ。見ろ、貴様のせいで固まった」

信長様は、フリーズした私の肩を掴んで抱き寄せた。

奥方様って何?

よく、時代もののドラマで、キリッとした女優さんが凄く高そうな打ち掛け着て演じてるやつ?
何だか急に、時代劇の世界に飛ばされた様な気分だ。いや、その時代劇の時代に飛ばされてはいるんだけど......

「奥方様、如何なさいましたか?」

秀吉さんが更に続けて私の顔を覗き込んできた。

「へっ、あのっ..........あー!!秀吉さんからかってる」

秀吉さんは、私の呆然とした顔を見て今にも吹き出しそうに口を押さえている。

「悪かったなアヤ。楽しかったか?」

「ただいま。もう、心臓止まるかと思った。ひどいよ秀吉さん」

何て悪い冗談なんだ。

よく見ると、さっきまで頭を下げていたみんなも、こっちを向いて笑っている。

「みんなでからかうなんてひどーい」

私の反応を分かってて、顔を赤くする私を優しい目で見ているみんな。

「からかってはいないだろ?お前が信長様の奥方様になったのは本当の事だ」

「おっ、おくっ、奥方って」

もう既に、大きなプレッシャーに潰されそうなんですけど

「秀吉、あまりからかうな。アヤ、今更逃げられると思うな?解消はできんと言ったのは貴様だ」

あぁ、自分で言った言葉にこんなに早く縛られるなんて。

「形式や言葉にとらわれるな。貴様は先ほどの様にニヤニヤしておればいい」

ちゅっと、帰城早々みんなの前で軽くキスをされ、私の頭はもういっぱいいっぱいになった。


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