第50章 初めての夜
「お城が見えてきましたね」
随分とみんなに会ってない気がする。
「そうだな」
信長様の指にはめられた指輪がキラッと光った。
「みんな、びっくりしますね。」
「何をだ?」
「私がその、信長様の..........」
妻 という響きがまだ恥ずかしくて中々口に出せない。
「貴様が俺の妻となった事は、とっくに皆知っておる」
「ええっっ!!」
そうなの?なぜ?
「貴様のいない一年間、親族と重鎮達を説き伏せ、鍛治師に指輪を作らせ、貴様が戻り次第妻とする事を伝えてあったからな」
「信長様...」
そんな事してくれてたなんて。
「祝言は戦況が落ち着いておれば、春頃に行う予定で秀吉が動いておる」
あ、それって...........
「私それ、気付いてました。でも、てっきり信長様と他の姫の祝言の為だと思ってたから悲しくて」
「とことん阿呆だな、貴様は」
「っ、ごめんなさい。でも、祝言なんてして頂かなくても私は十分幸せです」
本当に、突然のプロポーズ&結婚から毎日、じわじわと幸せの波が押し寄せてきて、ドキドキもニヤニヤも止まらない。
「祝言はする。貴様が俺のものだとこれを機に世に知らしめる。もう、誰にも手出しはさせん」
ぎゅっと、抱きしめる腕に力を入れられるだけで、顔がやっぱりにやけてしまって、それを見られないように信長様の胸に隠す様に顔を埋めた。
現代の様に、役所に婚姻届を出す事がないから残念だけど、現代なら私、織田アヤになったんだと、「きゃー」とずっと心は騒がしい。
「いい加減そのふにゃけた顔を戻せ。また皆にからかわれるぞ」
そう言うと、私の後ろ髪を優しく引っ張って、視線を合わせた。
「そっ、そうですよね」
(私はもう信長様の奥さんになったんだから、しっかりしないと)
ピシッと背筋を伸ばして前を向いた。
「ふっ、そんなに分かりやすく気を張るな。貴様はいつも通りでいい」
再び顎を掴まれ顔を振り向かせられ、視線が合った。
「初夜が楽しみだな」
そういたずらに信長様は囁いた。