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恋に落ちて 〜織田信長〜

第49章 答え合わせ



「アヤ」

「えっ、はいっ」

もう、逃げ道はないと腹をくくり、私は信長様の横に立った。

「見ろ、この目の前に広がるのが、俺の生まれ育った濃尾平野だ」

信長様は廻り縁から外を指差した。

「へっ?」

濃尾平野、社会で習った記憶がある。てっきり所構わず抱かれると思ったから、拍子抜けして変な声で答えてしまった。


「まだ、尾張の小国で燻っていた頃、俺はいつもあの平野を馬で駆けてはいつか天下を取ると思っていた」

信長様の目が少年の様にキラキラと輝いている。

「その思いは今も変わらんし、必ず実現させる。だがその思いの中に、一つ増えたことがある」

「増えたこと?」

何だろう?と首を傾げるわたしの頬に、信長様は優しく手を置いた。

「貴様だ」

「?」

「あの頃の俺に貴様はいなかったが、今は貴様がいる。俺がこれから思い描く未来には、アヤ、貴様が必ず横にいる」


「っ.........」

こんな所で抱かれたらどうしようと、そんな事しか考えられなかった愚かな自分を殴ってやりたい。


「アヤ、俺が欲しいのは、高貴な血を持つ姫でも、強力な後ろ盾を持つ姫でも、閨で手管を使う女でもない。わがままで、泣き虫で、全然俺の言うことを聞かない、手のかかる貴様だけを愛している」


「っ、.............っ」

うー、死ぬ程嬉しいけど、最後の手管は余分だと思う。


「これが最後だ。アヤ、貴様の本心を言え」

本心って、本心?


「っ..本心って、信長様と一緒にいたいとか、ですか?」

よく分からないから、半信半疑で聞いてみた。

「ふっ、貴様の本心はそんな簡単な事ではないだろう?」

困った様に信長様は笑う。

本当に?言ってもいいの?


「私の本心を聞いて、嫌いに、ならない?」

「ふんっ、勝手に俺をどこぞの姫にくれてやろうとしたり、未来の薬を飲んでまで俺を拒んだり、貴様は本当にひどい女だが、そんな貴様すら俺は愛している」

「うっ..それは本当に、ごめんなさい.....」

こうやって聞くと、私は何てひどい女なんだろう。


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