第49章 答え合わせ
石垣を降りて少し歩くと大きな川が流れていて、石でゴツゴツしたその川べりを歩いた。
一つ小さめの平らな石を見つけたので立ち止まり拾うと、川に投げた。
自分の予想では、石は川の上を跳ねると思っていたけど、ボチャンと跳ねる事なく川の中に落ちた。
「.......あれっ、おかしいなもう一回」
足元から小さくて平らな石を2つ見つけて、もう一度投げた。
ポーンと、今度は一回川面を跳ねてから石は落ちた。
「あっ、出来た」
実家の近くを流れる川で、小学生の頃よく友達とした水きり。あの頃は、5回も6回も水の上を跳ねたのに。
「ん〜なんかコツがあるんだよね」
昔の感覚を思い出しながら、再度石を手に持って投げる態勢をとった。
「もっと腰を落として投げろ」
えっ?
慌てて振り向くと、走ってきたのか、息を切らす信長様がいた。
「どうした、投げんのか」
「あっ、はい」
言われた通り、腰を落としてヒュッと投げた。
ポーン、ポーン、ポーンと、石は三回川の上を跳ねた。
「出来たな」
ニッと笑ったのを合図に、
「信長様っ!」
私は信長様に駆け寄って思いっきり抱きついた。
胸に顔を寄せると、珍しく心臓の音が早い。気になって、呼吸が乱れている信長様の顔を見た。
「すごい汗、どうしたんですか?」
私は手拭いを取り出して、信長様の顔を伝う汗を拭いた。
「貴様が勝手にいなくなるからだ」
いなくなったのは信長様の方では?と思ったけど、もう波風を立てたくはないからその言葉は飲み込んだ。
「ふぅー」と大きく息を吐くと、信長様は私を強く抱きしめ返した。
「護衛の者を連れずに勝手に歩き回るな。また攫われたらどうする」
(あっ、もしかして心配して探してくれたのかな?)
「......ごめんなさい」
「貴様は本当に油断ならん。俺を振りまわす天才だな」
どんな時でも、振り回されているのは私だと思うのは、私だけなんだろうか?何だか納得いかないけど、でも、もうなんて言われてもいい。戻って来てくれて、抱きしめてくれて、また折れてくれた。
信長様にしては珍しく、秀吉さんの様に小言を呟いていたけど、私は黙ってそれを聞きながら、信長様を抱きしめ続けた。
暫くすると、もう一度大きくため息をついて、信長様も小言を言うのを諦めた様に、ただ私を抱きしめた。