第49章 答え合わせ
部屋を出て行った信長様は、次の日のお昼になっても戻っては来ず、私は一人、お部屋に運ばれた昼餉の膳の前に座っていた。
これまでにも、何度か信長様を怒らせて部屋を出て行くことがあったけど、信長様はいつも最後には折れてくれて、抱きしめてくれて、愛をいっぱい囁いてくれた。
でも、あんなに怒った信長様は見た事がない。
私は、それくらい酷いことを信長様にしたんだ。
好きだと、愛していると、離さないでと囁きながら、自分はいざという時に傷つかない様に、ピルを飲んで保険をかけてた。拒絶だと思われても仕方がない。
最後に私を見つめた、傷ついた様な信長様の目が頭から離れない。
信長様に強く握られ残った手首の痕が、信長様の怒りと悲しみを映し出している様な気がして、またズキっと痛んだ。
側に居られれば、それだけで良かったはずなのに。
一緒にいる時間が長くなればなるほど、大好きな気持ちが膨らんで、信長様を知れば知るほど、私だけを愛して欲しい欲にかられて行く。
でも、信長様の大望を叶えてほしい気持ちも本当にある。
信長様の大望は、他のみんなの希望でもある。いつのまにか、家族の様に大切になった安土の武将達やお城の人達のためにも、私はここは分をわきまえるべきだ。
「はぁ〜」
どうして、信長様なんだろう。もっと、会社の同僚とか、学校の先輩とかと恋をすれば、ただ楽しく何も考えずに過ごせたのに。
.........でも、好き。
信長様じゃないともう息もできないくらいにあの人が好き。
現代での生活も、家族も、友達も、何もかも捨てても一緒にいたいと思ったのに。肝心な事は、いざとなると怖くて仕方がない。
私は本当に臆病だ。
「少し、散歩に行ってきます」
部屋の空気が重苦しくて、近くにいた女中さんに声をかけて、お城の外へと出た。