第48章 信長の許嫁
アヤが行った後、月華院は信長と向き合って口を開いた。
「あの子に、決めたのですね」
「そうだ」
「いつか、ご正室となられる方が出来たら懐剣を渡させて欲しいと言った私との約束を守って頂き、ありがとうございます。無事アヤに渡すことができ、漸く私の役目も終わることが出来ましょう」
「お濃、貴様も達者で暮らせ」
「信長様は変わられましたね。あなたとは長い付き合いですが、あなたを優しい人だと思ったのは今日が初めてです」
「ふんっ、随分な言われようだが、言い得て妙だな。この命に代えても守りたい者ができたからな。今は少しだが、出家を選んだあの時の貴様の気持ちが分かる」
「では、その大切な者を決して手放しますな。アヤは、あなたとは違う覚悟を決めております」
「?どう言う意味だ」
「あの子は、とても賢く優しい子。あなたを思うあまり、間違った選択をしようとしております」
「.........言っておる意味が分からん」
「アヤは、信長様の正室に自分がなろうとは露ほども思っておりません。いずれ決められた高貴な姫が嫁いできた時には、あなたの側は離れず受け入れるつもりです。ですが、あの子の心はきっと持ちますまい。やがて壊れてしまうでしょう」
「バカな事を、高貴な姫とは何の事だ!アヤ以外はあり得ん」
「では、その様に伝えて差し上げては」
「言葉で伝えずとも、側にいるとはそういう事だ、何故分からんのだ」
愛しい愛しいアヤ。どれほど愛していると伝えても、何故貴様はこの腕からすり抜けようとする。
「信長様、女には、時には明確な言葉が必要なのです。あなたが正室を娶られないのは自分が邪魔をしているからだとあの子は思っているのかもしれません。あの子の体の事、信長様はご存知なのですか?」
「.............体の事だと!?」