第48章 信長の許嫁
「貴方は、それで良いのですか?聞けば、信長様は片時も貴方を離さずそばに置いていると聞きました。そんなに思い合っているのに.......」
何もかもを見透かされそうな目が私を見る。
「..........っ、良くは、ありません.......正直...考えないようにしてます。でも.....その日がもし来ても....っ、離れないって....決めましたから」
これは、私の中で唯一決めている揺るがない本心だ。
「ですが、殿方と閨を共にしていれば、いずれ貴方も母になりましょう。そうなったとしても、同じ事を言えますか?」
子供ができたら、私の考えが変わると言いたいんだろうか。
「心配には及びません。子供は、当分授かりませんから」
「?..............どう言う意味ですか?」
「それは....」
誰にも言うつもりはなかったけど、初めて会った私に、全てを包み隠さず教えてくれた月華院様には、隠し事をしてはいけない気がした。
未来から来た事だけは濁しながら、私はこれまでの全てと、信長様に隠している事を月華院様にお話しした。
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「............そう。では、これはあなたからそのご正室となられる方にお渡しなさい。それがきっとあなたのケジメとなるでしょう」
私の話を聞き終えた月華院様は、懐剣を持つ私の手を両手で包み込んで、何度もその手を撫でてくれた。
涙が出そうだったけど、月華院様の前で泣くのは違う気がして、私は必死で唇を噛んだ。
結局、私はその懐剣を預かる事になり、自分の荷物の中に大切にそっとしまった。