第48章 信長の許嫁
「すぐ戻る。馬を繋いでおけ」
信長様は馬をご城主に渡し、私の手を取ってお城とは反対方向に歩き出した。
「あのっ、どこへ行くんですか?」
てっきりお城に上がらせてもらうと思ってたけど
「この先にある寺だ」
「お寺?」
「ああ、ついてこれば分かる」
私の手を引きながら、石段をどんどん降りていく信長様。
あっそう言えば、月華院様にお城で会わなかったな。伸びしろと出迎えの派手さですっかり忘れてたけど、どこにいらっしゃるんだろうか。
信長様にも聞きそびれてしまったし...
石段を降りて少し歩いた先に、信長様の目指すお寺はあった。
今度はお寺の石段を上がり境内を通り過ぎると、立派なお墓の前へと出た。
「ここは?」
見るからに、権力者のお墓っぽいそこに信長様は軽く手を合わせた。
「親父殿の墓だ」
「親父殿って、信長様のお父様?」
「いや、実の父ではなく義理の父になるはずだったが、実の父の様に思っていた人だ」
えっと、話がよく飲み込めない。この時代の人たちはよく、血の繋がりがなくても、オヤジとか兄とか姉とか、兎に角、関係が深い人に親族名称を使うことがある。このお墓の人物もそう言った感じの人なんだろうか。
「分からんでいい、俺の大事な人の墓だ」
信長様は、訳がわからず微妙な反応をした私の頭に手を乗せ微笑んだ。
だから、信長様の大事な人と聞いて、私も慌てて手を合わせた。