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恋に落ちて 〜織田信長〜

第48章 信長の許嫁



信長様が言った通り、宿を出てしばらくすると、岐阜城へ到着した。

ここは、安土に移るまで信長様が住んでいたお城。

今は、信長様の家臣がこの城を治めているみたいで、信長様の到着時間を知ってか知らずか、城についた時には、城内の人全員じゃないかと思うほどの人が、門の前で頭を下げて待っていた。


「何だこれは、此度は別に城の視察でもなんでもない。個人的な用事だ。今すぐ頭を上げて下がれ。少し様子を見たら直ぐに発つ」

仰々しい事を省きたがる信長様は、私を馬から降ろし自身も降りると、みんなに下がるように言った。


「信長様、そんな言い方」

みんな、きっと長時間待ってたのに。

「構わん、貴様との時間が優先だ」

いや、嬉しいけど、じゃあどうしてお城に寄ったの?上の者が来て無視するなんて、私の時代だって無理だ。

「貴様に城を見せてやりたかっただけだ」

だから、私一人ならちらっと見て帰るも可能だけど、信長様はここで一番偉い人なんだって分かってるのかな。

「俺たちの事は放っておけ。城を少し見たら出る」

冷たく言い放ち、私の手を取る信長様。

「お待ち下さい信長様っ、皆、信長様が来られるのを待っておりました。宴もご用意しております。その様な事をおっしゃらず、どうか今宵はこの岐阜城でお過ごしを」

必死で食い下がるご城主の方に申し訳なくて、引き止め策に出た。


「信長様、折角ですし、宴は参加しませんか?私も、お城の皆さんとお話ししてみたいですし、ダメですか?」

はっ?って顔を信長様は一瞬したけど、

「貴様がそう言うなら分かった。だが夜は宿で泊まる。それだけは譲れんからな」

子供の様に宿にこだわったけど、何とか了承を得た。

「......はい」

きっと今夜の宿も貸切なんだな。伸びしろ と言う言葉がまたしても思い出され、あれこれと考えてしまった。

「では、宴会まで世話になる」

「はっ、ありがたき幸せ」

本当に安心した様に、頭を下げるご城主の人。

色々と堅苦しい事は省かれている普段の安土ではあまり目にしない光景に、やはり信長様は凄い人なんだと実感させられた。


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