第47章 岐阜へ
『ごめんなさい。信長様』
『変な奴だ、何を謝る』
『だって、私、あなたに......』
『アヤ?』
隠している事があるの.......
「.............アヤ、アヤ」
「っ、...........のぶ...長様?」
冷たい外気が頬にあたり、夢から現実に引き戻された。
「アヤ、どうした?怖い夢でも見たか?」
どうやら寝ながら泣いていたらしい私の頬に流れた涙を、信長様が指で拭った。
「いいえ、でも.......やっぱり....」
夢だった。
私は、何て浅ましい女なんだろう。
正室になれない、無理だと言いながらも、あんな夢を見るなんて。
心の奥底で捨てきれない願望が、私にあんな夢を見させた。
「っ......うー」
自分に腹が立って、涙をこれ以上流さない様に、信長様に強く抱きついた。
本当は、誰にも奪われたくない。
正室なんて、一生来なければいい。
私は信長様のものなのに、信長様はわたしのものじゃない。
こんなにも、こんなにも好きなのに。
「アヤ、大丈夫だ。次は怖い夢は見ぬ。もう少し眠っていろ」
信長様は、何度も私の頭を撫でながら、頭に口づけを落とす。
頭まですっぽりと信長様の羽織に包まれ、私は再び目を閉じた。
でも、もう一度見たいと思ったあの夢の続きを見る事は出来なかった。