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恋に落ちて 〜織田信長〜

第47章 岐阜へ



「ここから岐阜までは、山を越えて行く。寒くなるゆえしっかりとくっついていろ」


「はい」

暖かい羽織を一枚着込んで、私は信長様にぴったりと寄り添った。

馬はひたすら山道を行く。

少しずつ標高が高くなるにつれ、はぁー、と吐く息が白くなってきた。

「辛くないか?」

「はい、大丈夫です」

(さっき、お市から聞いた月華院様のことを聞きたいけど、何て切り出そう。)

元許嫁の方に会うんですか?

んーなんか違う。

どうして別れたんですか?

これはもっと違う。

その人の事、好き、でしたか?

最早、聞いてもいい内容ではない気が....


「信長様」


「どうした」

「私、聞きたいことがあって....」

包み込まれる様な信長様の腕の中で、私は質問をしようと思ったけど、信長様の胸の中は暖かくて。それに昨夜はほとんど寝てなくて、馬の振動が私を心地よく揺らし.....

「アヤ?」

「.......スー....スー..」

「ふっ、暖かくなって眠ったか。道のりは長い。暫く眠っておれ」

ちゅっと、頭にキスの感触がして、私は眠りに落ちた。




ふわふわと微睡む中で、私は幸せな夢を見た。


『母上、早く、こちらです』

信長様にそっくりな男の子が私の手を引いてどこかへ連れて行こうとする。

『待って、あなたは誰?』

どこから見ても信長様の分身の様なその男の子は、キョトンとした顔で私を見た。

『父上、母上が何やらおかしな事を!』

向こうに立つ人影にその男の子は父上と呼び掛けた。

誰?
じっと目を凝らして、こちらに歩いてくる人物を見る。

『アヤがおかしな事を言うのは今に始まった事ではない』

『信長様っ!』

私のそばに来た信長様は、笑いながら私を抱き寄せる。

『どうしたアヤ』

『あの、あの子が私の事を母上と、それに...』

『寝惚けておるのか?本当に手のかかる奴だ、俺たちの愛し合った証を忘れるとは』

『あっ、愛し合った証〜!!』

なんて照れる言葉を恥ずかしげもなく

『ふっ、次は女を産め。貴様によく似た姫がいい』

顔が近づき口づけられる。

あぁ、これは夢だ。私に都合のいい夢。

決して叶うことのない私の夢を、未来を見せてくれているんだ。

だって、今の私に子供ができるはずないんだから。

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